鈴木内科クリニック・鈴美館

鈴木内科クリニックは、漢方外来、生活習慣病外来、疼痛外来、感冒外来のクリニックです。

TEL:099-278-5797 FAX:099-278-5796

〒899-2702 鹿児島県鹿児島市福山町193-1

肥満の原因

ホルモン肥満仮説の図

ホルモン肥満仮説の図です。

肥らせる炭水化物が、インスリンレベルの上昇を引き起こします。
インスリン抵抗性はインスリンレベルの上昇によっておこり、それがまた新たなインスリンレベルの上昇をおこすという悪循環を引き起こします。
果糖はここには載せてませんが直接インスリン抵抗性を高めることで、重要です。
そしてインスリンレベルの上昇が肥満の原因であり、それによって過食や運動不足が引き起こされる。従来の説とは順序が逆です。

過食や運動不足が肥満の原因ではないんです。
それは結果なんだというのがDr Fungの主張です。

だから、カロリー制限や運動では肥満は治療できない。原因となるのはあくまでもインスリンレベルが高いことであり、それを増幅しているのがインスリン抵抗性だからです。インスリン抵抗性の原因は果糖とインスリンそれ自体です。脂肪ではありません。

ですから、インスリンレベルを下げ、インスリン抵抗性を改善させることが肥満の治療になるわけです。
そのために食べない時間をつくり、インスリンレベルを下げる必要があるのです。

 

インスリン抵抗性とインスリン感受性

インスリン抵抗性とインスリン感受性

インスリン抵抗性とは、常に分泌されるインスリンの刺激に慣れてしまって、より高いレベルのインスリンでないと働かなくなってしまった状態でした。いわばインスリンの利きが悪いので、余計にインスリンが必要な状態になってしまったことをいいます。

次にインスリン感受性ですが、これはインスリン抵抗性の逆です。インスリン感受性が高いとはより少ないインスリンで、インスリンが働く状態、つまり脂肪がつきやすい状態だと大まかに考えてください。

 肥満する人はインスリン感受性が高いのでしょうか、それともインスリン抵抗性が高いのでしょうか?

この問いには単純に答えることはできません。多くの人が混乱しやすい大事なポイントなのですが、その理由はインスリン抵抗性や感受性は場所によって異なるということと、経過によって同時に変化するわけでもなく、また個人差があるということからおこります。

インスリンが作用する体の部位は、脳、肝臓、筋肉、脂肪組織とおおまかに4つに分かれます。インスリンが常に分泌されることで、肝臓や筋肉におけるインスリンの利きが悪くなる(インスリン抵抗性の出現)ことがおこると、インスリンの分泌がより必要になります。

この時点ではまだ皮下脂肪組織はインスリン感受性が高いので、インスリンの働きでどんどん大きくなっていきます。そして脂肪細胞も大きくなるにつれ、徐々にインスリン抵抗性が出現しそれが高まると、もともと皮下脂肪よりもインスリン感受性が低かった内臓脂肪組織のインスリン感受性が相対的に高くなり、本来たまるべきではない部位に脂肪が貯まる(異所性脂肪)ようになります。これが危険な内臓脂肪です。

どこまで皮下脂肪が大きくなれるのか、そしてどの時点から内臓脂肪のインスリン感受性の方が相対的に高くなり、内臓脂肪が貯まり始めるのか、さらにどれだけインスリンを分泌する力があるのかなどの点は、非常に個人差があるところです。

皮下脂肪に蓄える能力のある人は、皮下脂肪のインスリン感受性が高かったから肥れたわけですが、すでにその肥った状態が限界に来ていて、インスリン抵抗性が高い状態にまでなっているか、それともまだまだ肥れる状態(インスリン感受性が高い)のかは、肥っているだけではわからないということになります。

日本人を含むアジア人はこの皮下脂肪の量が少なく、またインスリンを分泌する能力も弱いなど、たいして肥っていないようでもすでにインスリン抵抗性が高くなっていて、危険な内臓脂肪が蓄積することが欧米人に比べて多く見られ、人種の違いがあることは確かのようです。また内臓脂肪が糖尿病を含む様々な成人病の原因になること(メタボリック症候群)はわかっています。

肝臓と筋肉のインスリン抵抗性は直接影響せず、食事によって肝臓のインスリン抵抗性が改善したとしても、筋肉のインスリン抵抗性とは関係しません。運動の欠乏は筋肉のインスリン抵抗性の原因になりえます。その場合はまた逆に運動で筋肉のインスリン抵抗性が改善しても肝臓にはほとんど影響しません。肝臓と筋肉どちらのインスリン抵抗性が問題なのか、または両方なのか、個人により違っているだろうと思われます。

そして一番大事な点は、肝臓または筋肉のインスリン抵抗性の高まりに反応して、全体のインスリンレベルが高くなっても、脳の視床下部はインスリン抵抗性を持たないので、視床下部の食欲中枢が高いインスリンレベルに反応して体重のセットポイントを上げてしまうということになるのです。

グルカゴンはダイエットの味方

グルカゴンはダイエットの味方。

インスリンはエネルギーを保存するホルモン。グルカゴンはエネルギーを動員するホルモン。

だから、インスリンは血糖を下げ、脂肪の分解を抑える。グルカゴンは肝臓のグリコーゲンの分解を促進することで血糖を上げ、また脂肪細胞から脂肪を動員する(そしてケトンが続く)

インスリンとグルカゴンはお互いに制御しあう関係にあり、一方が優位になると一方が抑制される。インスリン抵抗性によってインスリンが優位な状態が続けばグルカゴンは抑えられ、脂肪は動員されにくい。

 

食事の回数を減らすことでインスリンの分泌回数が減れば、インスリンレベルは低下しグルカゴン優位な状態が生まれ脂肪はより動員されやすくなる。この状態ではグリコーゲンの分解もおこりやすくなるため、運動によっても、明け方のインスリンに拮抗するホルモンの上昇によっても血糖値は上がりやすくなります(暁現象)

つまり、一型糖尿病やインスリン分泌能が落ちてきた2型糖尿病の人に見られる暁現象が、ケトジェニックダイエットや糖質制限をしている糖尿病でない人で起こってくるわけです。

朝の血糖の上昇を見れば、まさに耐糖能障害を招いたように見えますので、これをもって糖質制限は危険であるとか、食事の回数を減らすことはよくない(一日3食きちんと食べないとダメ)ということが言われる根拠の一つになっています。

最初に戻ってインスリンは貯蔵のホルモン、グルカゴンは動員のホルモンですから、グルカゴン優位の状態であれば脂肪を燃やしたり、活動のための血糖を上げるのには有利ですが貯蔵はむしろ下手になります。つまりため込むことはできにくくなるので、食べすぎは即翌朝の血糖値に反映するようになるようです。

これ自体にはいいも悪いもありません。インスリンレベルが下がれば当然起こることですが、ダイエットにおいてグルカゴンは味方だといっていいと思います。

補足ですがタンパク質を食べた時におこりうるゆっくりとした血糖の上昇は、グルカゴンによっておこる肝臓からのグリコーゲンの分解(glycogenolysis)から生じるもので、タンパク質がすぐに糖新生(gluconeogenesis)によって血糖になったものではありません。

食事性たんぱく質由来のアミノ酸の一部が糖新生で糖になりグリコーゲンに終わるまでにはかなり時間がかかるようです。またかなりの部分の余剰のアミノ酸は糖新生で糖になるものより、窒素が外されエネルギー源として消費されるものの方が多いという記事もありました。

 

 

 

 

栄養不足とインスリン過剰分泌による代謝異常

栄養不足の改善が必要である(程度にもよりますが)ことと、インスリン分泌過剰による代謝の異常があることは別の問題ですが相互に関連があります。

一方だけならそちらに対処すればよいだけですから問題ありません。

しかし同時に存在する場合、どちらかを優先しなければならないということもないと考えていますが、これには反対の立場の人が多いようです。

栄養不足を招いている原因の一つにインスリン過剰による代謝異常がある場合、これを後回しにはできないと思うからです。

逆にインスリン優位の代謝異常を招く原因に栄養不足の問題もありますから、こちらも無視してはいけないということも言えます。

どちらを優位に改善をはかるかを個人個人で判断すればよいと思っています。

 

一度増えた脂肪細胞は減ることはない?

過去には一度増えた脂肪細胞は減ることはないといわれていました。

だから一度肥った人は脂肪細胞の中の脂肪の量が減っただけでまたすぐ肥りやすいとか、痩せている人はもともと脂肪細胞が少なく肥りにくいのだとか、いろいろなことが言われていましたが、今ではそれが間違いであったことがわかっています。脂肪細胞は他の皮膚などの細胞と同じように断続的に新陳代謝して、新しい細胞に入れ替わったり、必要に応じて増えたり減ったりしていたわけです。
脂肪細胞はおよそ15%の部分がミトコンドリアや核、細胞膜などの除脂肪組織であり、残りの85%脂肪滴の部分になります。このことは例えば10㎏の脂肪細胞が減少した場合、実際の脂肪の減少分は8.5㎏で1.5㎏は徐脂肪体重の減少になるということを意味します。つまり、脂肪細胞の減少だけでも除脂肪体重の減少はおきるということです。

(THE ART AND SCIENCE OF LOW CARBOHYDORATE PERFORMNCE Jeff Volekより)

 

肥満の問題と質的栄養不足の問題

質的栄養不足のある場合(ビタミン、ミネラル、タンパク不足)それを食事によって治療することはもちろんとても大切です。

しかし肥満症の治療と質的栄養不足の治療は基本的に別の物です。

質的栄養不足の治療をしたいのなら、カロリーあたりの栄養密度を最大限にすべきであり、肥満を治療したいのなら、高インスリン血症、インスリン抵抗性、レプチン抵抗性の治療、つまり肥満症を治療すべきです。

肥満と質的栄養不足が同時に存在することはもちろんあります。

しかし必ず同時に存在するわけでもありません。

 

肥満の問題と質的の問題は完全に別の問題であり、その二つを混同すべきではないというのがDr Fungの見解です。

 

 

痩せている人と肥っている人の違い

痩せている人はバター珈琲や生クリーム、チーズなどを食事以外の時に間食として食べても肥りませんが、肥っている人はさらに肥ってしまいます。

 

この違いはなぜ起こるのでしょうか?

 

人を肥らせるホルモンはインスリンですが、体脂肪が増加するとレプチンというホルモンが分泌され、これは食欲中枢に働いて体重を増やさないようにします。このネガテブフィードバック機能によって過度に脂肪を蓄えない仕組みがあるわけです。

インスリンとレプチンは本質的に反対に働き、一方は脂肪を蓄え、一方は脂肪を蓄えさせないほうに働きます。しかし果糖をとり続け、インスリン抵抗性が高まり、インスリンレベルが高い状態が続くと、レプチンもまた持続的に分泌されることになります。持続的なレプチンの分泌はレプチンに対する抵抗性を生じることになります。(持続的な刺激は抵抗性を生む)肥満した人にはレプチン抵抗性があり、痩せた人はレプチンに対する感受性が高いのです。

 

注)外因性にレプチンを投与してもレプチン抵抗性のある肥満症の治療としては効果がないことは確かめられています。

 

食事性の脂肪は、タンパク質や炭水化物とは異なる経路で代謝されます。腸管からカイロミクロンとして吸収され、リンパ管を通って直接全身をめぐる血流に入ります。門脈を通らないのでインスリンの働きは必要とせず、脂肪組織などに直接吸収されます。

ではやはり脂肪をたくさん取れば肥りそうですが、痩せた人(レプチン感受性が高い人)ではそれは起こりません。脂肪をたくさん食べると脂肪細胞に一旦蓄積はされますが、インスリンは上昇しません。レプチンが分泌されレプチン感受性の高い痩せた人に食べるのをやめさせてしまいますし、無理に食べ続けると新陳代謝があがり、余分なエネルギーは消費されてしまいます。

一方で肥った人(レプチン抵抗性のある人)ではそうはなりません。

脂肪をとってもインスリンは上昇しませんが、脂肪組織にやはり直接蓄えられます。レプチンは分泌されますがレプチン抵抗性があるため体は反応せず、食欲も落ちなければ、代謝が上がることもありません。つまり更に肥ってしまいます。

つまり痩せていてレプチン感受性の高い人はチーズやバターなどの高脂肪の物をさらに食べても体重を増やすことはできませんが、体重を減らそうと考えていて肥満やインスリン抵抗性、レプチン抵抗性の問題をすでにもっている人にとっては食事以外に余分な脂肪をとることはよくないということです。

注意点ですが低脂肪の食事を勧めているわけではありません。低糖質高脂肪適量タンパク質の食事を満足いくまでしっかり食べることが基本です。
脂肪はだれにとっても肥らないという誤解から、もしくはケトン体を上げるために脂肪(オイル、生クリーム、バター)を食事以外にとることは、肥満の問題がある人は避けるべきであるという意味です。
Who needs to avoid Fat Bombs and BPC? by Jason Fung より

 

加工された果糖

野生の状態で肥満していることは、食料が不足した状態になったとき、有利ではありません。

肥満したライオンは狩りにおいて不利ですし、肥満した草食動物もまた捕食されやすくなり、生き残る上で不利になります。肥満にメリットはありませんので、倹約遺伝子の必要もありません。倹約遺伝子仮説は間違いであるとDr Fungは主張しています。

一年をとうして、食料の豊富なポリネシアの島々の人々も、炭水化物をとりながら、肥満はまれでした。肥満が増えたのは、食料が豊富になった為ではなく、運動量が減ったためでもなく、加工食品を取るようになってからです。

加工された果糖が一番の問題だということになります。

 

肝と膵への脂肪蓄積

アジア人は北アメリカ人より低いBMIで2型糖尿病を罹患する傾向があり、中国人の平均2型糖尿病のBMIは23.7である。
ここでの重要な要因は総脂肪量ではなく、肝と膵への脂肪の蓄積である。
一般的な2型糖尿病と比較的やせ形の2型糖尿病の病理は似ており、LCHFとIF(間欠的ファステング)による食事介入は有効である。

とDr Fungは言っており、臨床例も紹介しています。彼自身中国系ですし、The Obesity Codeの枠組み、考え方はアジア系の人たちの臨床例も数多く経験したうえでの議論であることは明らかだと思います。

果糖(フルクトース)の問題点

果糖(フルクトース)は血糖値を上昇させないし、インスリンレベルを上昇させない。それでは果糖はよい糖かというと実はよくないということはよく知られています。
フルクトースの問題点はその代謝にあります。

もしショ糖(砂糖の主成分、フルクトースとグルコースが一対一の割合)をとれば体のすべての細胞でグルコースは利用することができますが、フルクトースはほとんど利用することができず、肝臓で代謝されます。

フルクトースはグルコースに転換することもできますが、すでにグルコースがたくさんあれば、直接脂肪に転換されます。つまりグルコースよりも脂肪肝をつくりやすく、それがインスリン抵抗性の原因となるため、フルクトースは肝臓の世界では大きな問題であり、グルコースより20倍悪いとDr Fungは言っています。加工食品に含まれる異性化糖(果糖ブドウ糖液)はさらに危険です。(Dr. Jason Fung – ‘A New Paradigm of Insulin Resistance’)

 

お米の主成分はでんぷんであり、グルコースがたくさん集まったものです。当たり前ですがフルクトースは含まれていません。よく見るご飯と角砂糖の山の比較の写真は、単に糖質量(カロリー)の比較であり、その代謝とインスリン抵抗性の原因という観点から見た場合、同等に扱うべきものではないということになります。