まずはきちんとした朝食を食べること

セカンドミール効果は二つあり、これをしっかり理解することがダイエットのためには絶対必要です。

 

一つ目はオートミールや麦飯などの水溶性食物繊維豊富な食事(豆などのレジスタントスターチ豊富なものでもよい)を朝食でとると、昼食での血糖上昇が抑えられるというものです。

 

朝食後数時間たって、大腸で短鎖脂肪酸がつくられ始め、それによって大腸のL細胞からGLP-1が分泌されます。

 

食事をとれば、膵臓は血糖の上昇に反応してインスリンを分泌しグルカゴンの分泌は抑制され、また主に筋肉を中心に血糖を取り込むことなどによって血糖の上昇をある程度のところで抑えるわけですが、GLP-1の分泌はそれらのことがより速やかに行われるように、あらかじめ準備するように指示する信号のような役割をしてくれますので、素早く血糖の上昇に対応できます。

 

よく勘違いされているところですが血糖があまり上がらないからといって、インスリンが大量に分泌されるわけではありません!グルカゴンの抑制と筋肉での取り込みの亢進と素早いインスリンの分泌(遅れるとより大量に必要になる)によって、インスリンの分泌は逆にすくなくてすみます。

 

これらのことは(血糖の変動が少ない、インスリンの分泌が少ない)実際に血糖を測らなくても食後の眠気やだるさが少なくなることで実感できる感じがします。

 

朝食をとることで体のホルモンバランスがリセットされるので、朝食は大事!などというようなことを聞いたことはあると思いますが、これらのことを知ると腑に落ちます。(以前は朝食は否定していました。大間違いでした。すいません。)ただし朝食をとらないよりはとった方がましとばかりに朝から菓子パンなどを食べてしまっていては、これらの効果は全く期待できないですし、逆に食べないほうがましです。やはりきちんとした朝食をとりましょう。

 

これらのことは大腸におけるインクレチン(消化管ホルモンの総称)効果ともいうべきものです。食事の時にすぐに始まる小腸までのレベルでのインクレチン効果(こちらも重要ですが)とは区別してください。

二つ目は昼食での食事量が自然に少なくなる効果です。適切な量の食事で満足できるようになります。これはGLP-1の食欲中枢に働く作用で説明されます。

 

そして昼食でも水溶性食物繊維をさらにしっかりとると、朝との相乗効果もあって、夕食時になってもいわゆる腹持ちの良い状態が続いている場合が多くなります。食べなくてもいいかな?という気分にまでなっていれば、ここでスキップするなり、タンパク質中心の食事を軽くとるなりすればよいと思います。夕食に糖質をどれくらいとるかは、その日の活動量で自然にきまってきます。

 

結果的に一日の摂取カロリーや糖質量は減ってきますので、自然なダイエット効果が期待できます。

 

朝食をとらないと太ります。朝食をとらないから逆に太るんですと言われることの意味がこれでしっかり説明できます。朝食に何を食べるべきかをしっかり理解していないので、朝食を食べると太るから朝食は抜いたほうが良いと思ってしまっていたのです。

 

カロリー制限や糖質制限ではなく、自然なカロリーや糖質のコントロールを目指すことがダイエットの成功の一番の近道です。

 

まずはきちんと食べること

 

昔から言われている当たり前の結論ですが、GLP-1のことを知れば、よりその重要性が理解しやすいと思います。

暁現象

糖質制限を続けていくと朝の空腹時血糖が徐々に高くなることがおこりやすくなります。この現象について、ジェイソンファンをはじめ、ローカーボの推奨医師はいろいろな説明を用いて自然におこることであり問題はないとしていました。

 

かつては私自身もそう理解しようとしましたが、完全に納得はできていませんでした。今はそれらの説明は間違っていたことがわかります。

はっきり証明できているわけではありませんが、水溶性食物繊維不足による短鎖脂肪酸の合成不足がGLP-1の基礎分泌を減らし、それがグルカゴンの抑制不足につながっておこる現象であったと考えれば、何の矛盾もありません。そしてGLP-1の分泌不足が体にいいわけがありません。

 

糖質制限は健常人にとって体のホルモンバランスを崩しやすい食事法です。

 

GLP-1は近年になってその存在がクローズアップされてきましたが、昨日今日突然発見されたわけではありません。

 

糖質制限を推奨する医師たちにはGLP-1の働きを含めたうえで、糖質制限の有効性や安全性を説明する義務があります。血糖のコントロールをする上で、GLP-1のことを無視して話しても現在においては(過去は仕方なかったとしても)意味はありません。糖質制限の基礎となる理論はもはや時代遅れというのはそういう意味です。

グルカゴンの調整が糖尿病において大切な理由

食後の血糖をさげる唯一のホルモンが膵臓β細胞から分泌されるインスリンであるのは事実ですが、実はα細胞から分泌されるグルカゴンが抑制されることによっても間接的に血糖は下がります。というのはグルカゴンというのはインスリンに拮抗するホルモンで肝臓からのグルコースの放出を促し、低血糖にならないように血糖を上げる働きがあるからです。

 

通常であれば、食事をすればインスリンが分泌されるのと同時にグルカゴンが抑制され、その二つの効果が合わさって食後の血糖が高くなるのをおさえているのですが、糖尿病の患者においてはこのグルカゴンの抑制が不十分、または逆に分泌亢進があり食後の高血糖につながっていることがわかってきました。つまり、インスリンの分泌不足や糖質量だけが食後高血糖の原因ではないのです。

 

また糖尿病患者では空腹時グルカゴン濃度は上昇していて肝の糖新生による空腹時高血糖の原因となっています。一型糖尿病におけるケトアシドーシスもインスリンの枯渇だけでは起こらず、グルカゴンの分泌亢進が関与します。

 

このように、血糖値の調節にはインスリンに劣らずグルカゴンの作用もとても重要であることがわかり、糖尿病において特にグルカゴン分泌の調節異常が注目されるようになっています。

実は糖質制限の問題点に気がついたのも、インスリン分泌の少ない糖尿病患者で糖質制限を強化するほど、朝の空腹時血糖の上昇と食後の血糖コントロールが困難になっていく例を経験したからでした。

糖質制限の結果、インスリンの分泌不足を補えるはずが、逆にグルカゴンの制御を悪化させたため、血糖がコントロール不能になってしまったわけです。

 

このグルカゴンを制御する役割を持つのがGLP-1です。GLP-1はグルカゴンの分泌亢進を抑制し、血糖値を下げてくれます。

 

まとめると、血糖をコントロールするためにはインスリンとグルカゴンの両方を制御する働きを持つGLP-1の分泌を健全に保つことが必要で、糖質制限はGLP-1の分泌不足をさらに悪化させることはあっても、改善にはつながらない食事法です。

糖質制限推奨の医師たちにおこっている認知的不協和

2型糖尿病の病態を糖質制限的に主張すると

 

糖質を取りすぎるから、血糖を下げる唯一のホルモンであるインスリンがたくさん必要になる。過剰に分泌されたインスリンによって徐々に脂肪組織、筋肉、肝臓などの糖を取り込む臓器に対するインスリンの利きが悪くなり(インスリン抵抗性)、さらにインスリンの量が余計に必要になるという悪循環となる。時間の経過とともにインスリンを分泌する膵臓がつかれてβ細胞の数が減ってしまうと、インスリンの分泌が今度はだんだん減ってきてしまい、血糖コントロールができなくなる。

 

高血糖だけではなく、高インスリン状態も体に害をなすので、単にインスリンを注射して血糖を下げればよいというものではない(インスリンの分泌がない1型は除く)。糖質の取りすぎを改めることが最初に必要。カロリー制限中心で摂取カロリーの6割も炭水化物をとれという従来の食事指導は大間違い。糖質制限が進まないのは製薬会社と医療の癒着が一因だ!という感じでエスカレートしやすい傾向があります。

 

THE OBESITY CODE 邦題トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ

において著者のジェイソンファンはより詳しく、ホルモンバランスの乱れインスリンの過剰こそが問題で、インスリンが分泌されない時間を作ることが重要、つまりファステングによる治療を主張。単純糖質(砂糖、異性化糖など)がふえ、食物繊維を含む糖質をとらなくなったことが問題としながらも、方法論としては低糖質、高脂肪の食事を推奨しています。

 

ジェイソンファンは単なるカロリー制限は無効なこと、大事なことはホルモンバランスであること、それを整えるために食べるものの質、何を食べるかが決定的に大事であることなど実に素晴らしいことを主張していてこの点は今でも全く正しいと思います。でもそれを正すための方法論が、結局糖質制限であることに変わりはありませんでした。

彼にとって、そしてすべての糖質制限を主張する医師においても残念だった点は、ホルモンバランスの乱れの中心がインスリンの過剰であるとしたことです。

 

インスリンの過剰を問題とする糖質制限はもはや時代遅れです。

 

なぜなら、血糖の調節やインスリンの分泌、さらには血糖を下げる唯一のホルモンであるインスリンを分泌するβ細胞の保護までしていたのがGLP-1であることがはっきりわかってきたからです。

 

それはこの10年の間におこった医学の進歩です。これを受けて糖尿病学会の関心はGLP-1の臨床応用をさらに進めていくことに焦点が移っており、もはやカロリー制限にこだわる必要がなくなってきました。同時にこれは糖質制限をケースバイケースで容認しても大した問題ではないということも意味します。これを受けて糖質制限が認められてきたなんて喜ぶ前に、もっと真剣に今の医学の進歩の内容を勉強すべきといいたい。 残念!

 

GLP-1の食欲の制御、代謝の制御、全身の臓器に対する糖の取り込みの制御、そしてβ細胞のインスリンの分泌制御と保護など多彩な役割を理解しさえできれば、ファンがいみじくも指摘したホルモンバランスの乱れがすべてであるというときのホルモンとは、インスリンではなくGLP-1を代表とする消化管ホルモンであったことははっきりしています。



追記 糖質制限を推奨する医師が、糖質をとりつつ糖尿病を治すということの意味を理解できないのは、GLP-1に対する最近の治験を全く知らないか、知ろうとしないか、なんとなく無視しているか、知っているけどその意義を過小評価してしまっている(認知的不協和ってやつです)か兎に角そんなところですので、もうあとはほっておくしかありません。基礎知識が共有できなければ議論にはなりませんから。

 

更に追記 GLP-1製剤の臨床応用という医療経済(病院が儲かるという意味ですが)を最大の動機づけとして、急速に研究が進んだことも事実です。でもこれには良い一面もあります。おかげで、GLP-1の分泌を促進する食事に最大の焦点を当てるという動機づけを強化できるからです。注射を使わずとも食事で治せるはずです。

GLP-1の分泌を促す食事が、肥満と糖尿病の解決策

GLP-1の分泌が少なく、血糖の刺激が中心の状態では、もともとβ細胞のインスリン分泌力が低い日本人は肥る前に糖尿病を発症しやすい。

 

GLP-1の刺激を中心にβ細胞にインスリンを分泌させると、肝や筋などにもGLP-1は働き、より少ないインスリンで血糖を調節することができ、さらにGLP-1の分泌自体がβ細胞を疲弊させず守ってくれる。そして中枢神経に作用して過食を防ぎ、全身のエネルギー代謝の調節にも関与する。

 

いろいろな食べ合わせによって(ご飯+とろろ、ご飯+鯖缶とか)食後の血糖がご飯単独より下がることをいろいろ実験されている方がいましたが、これなどもGLP-1の働きを考えると矛盾なく理解できますが、糖質量だけに目を向けていると説明できません。これは小腸を中心としたレベルのインクレチン効果といえます。

 

食後数時間たってからは大腸を中心としたインクレチン効果が中心になります。ここで重要なのが水溶性食物繊維や難消化性糖質ということになります。

 

血糖の刺激によるインスリン分泌のことしか見ず、GLP-1のことをほとんど考慮に入れないと、糖質と同時に食物繊維も多く含む炭水化物の必要性は理解できません。

GLP-1は膵臓β細胞を保護してくれる

GLP-1の刺激によって膵臓のβ細胞はインスリンを分泌します。それ以外にも血糖の刺激によってもβ細胞はインスリンを分泌します。

 

大事なポイントは血糖の刺激より、GLP-1の分泌による刺激の方が血糖の調節に果たす役割が大きく(半分以上)、かつGLP-1の刺激はそれ自体がβ細胞の自然死を防ぎ、増殖を促すというβ細胞の保護作用があるということです。

 

つまり、GLP-1の刺激でのβ細胞のインスリン分泌は刺激すればするほどβ細胞にとって好ましく、逆にGLP-1の刺激が低い状態での血糖による刺激がβ細胞の疲弊につながっていく。

 

なんか糖尿病の病態が見えてきた気がします。

 

そして一律な糖質制限は、最初は血糖の刺激による膵臓の疲弊を防ぐ効果はあるものの、GLP-1の分泌に関してはマイナスの効果であり、さらにGLP-1のグルカゴンの分泌を抑える働きが効かないため、徐々に糖質をとらない空腹時や少量の糖質をとった状態でもグルカゴンの制御がわるくなり、空腹時血糖や食後血糖の上昇につながっていく。というストーリーが描けます。

2019年8月1日 | カテゴリー : GLP-1 | 投稿者 : suzukinaikaC

GLP-1を分泌するL細胞が大腸にあることの意味

GLP-1を分泌するL細胞を刺激する物質はわかっていて、グルコース、アミノ酸、そして脂質では一価不飽和脂肪酸(MUFAs)、ω―3多価不飽和脂肪酸(PUFA)です。多く含む食品としてオリーブ油、アボガド、アーモンド、魚や亜麻仁油などがありますから、これは地中海式食事が健康に良いとされる根拠の一つになっています。

 

GLP-1の分泌は食後15分から30分の間におこる最初の反応と60分前後のピークの2相性でそこから次の食事に向けて徐々に減少していきます。ここでGLP-1を分泌するL細胞の場所が小腸下部から大腸なので、そこに食物が至るまでの時間を考えて、最初の反応は小腸上部にあるk細胞または神経系を介した分泌であると考えられているわけです。

 

この食事によるGLP-1の分泌が肥満や糖尿病の患者において低下していることがわかって、それを治療する目的で、以前からGLP-1の分解酵素阻害薬はありましたが、特にGLP-1の様々な役割の研究が詳しくなされ、β細胞の保護作用も期待できることも相まってGLP-1の注射製剤を比較的早期から糖尿病患者に使うことが推奨されるようになってきています。

 

ですから、糖尿病のサイトで調べてみれば、GLP-1の作用については詳しく知ることができますが、ここで気づいてほしいのはL細胞の存在する場所の表現の違いです。小腸下部とだけ書かれていたり、小腸から大腸にかけてという表現がされていますが、実は大腸に最も多く存在しています。

 

最初に示したような栄養素がもはやそれほど存在しない大腸に最も多く存在しているという理由がうまく説明できないので、そのような表現になっているのかはわかりませんが、腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸がL細胞のGLP-1分泌を刺激することがわかったことで、大腸に最も多く存在する理由ははっきりしたと思います。

 

となれば肥満や糖尿病患者のGLP-1分泌が低いことの理由として、腸内細菌がつくる短鎖脂肪酸が足りないためL細胞の数が減少し、GLP-1の分泌が慢性的に不足し、時間の経過とともにインスリン抵抗性をはじめとする病理を作り出していると考えるのはかなり理にかなっていると思います。

 

主食として大麦やオーツ麦をとることが、GLP-1の慢性的な不足を外から補充せずに、食事で内因性に補充することにつながるなら、肥満や糖尿病の本質的な食事療法になるといっても言い過ぎではないと思いませんか?

肥満と2型糖尿病の病因にGLP-1分泌低下

GLP-1の話はまだ続きます。小難しいかもしれませんが、全体像がみえてくると、肥満や糖尿病の病態を理解するうえで絶対に必要な知識であることがわかってくるはずです。まだまだ未知の部分はありますが、かなりのことがわかってきていることに驚かされたので、できるだけわかりやすく伝えたいと思っています。

 

例えば、血糖の上昇は、食べ物に含まれる糖質量とインスリンの分泌だけで決まるものではありませんよね。消化管から血中に吸収される速さ、筋肉などの臓器に取り込まれる速さ、血糖を上げるホルモンであるグルカゴンの抑制など、様々な要素のバランスで決まってきます。

それらをコントロールする中心的な働きに関連するのがGLP-1です。インスリンとグルカゴンのバランスをとるより上位のホルモンであり、このGLP-1の分泌はもちろん食物中の糖質によってもおおきく刺激されますが、それ以外の要素もたくさんあって複雑に絡んでいます。いろいろな食材の食べ合わせによっても違ってきますし、食事のタイミングでも違ってきます。これらのことは食事の糖質量だけでは説明できませんが、GLP-1の分泌の仕組みや様々な役割を知ると、とても説明しやすくなります。そして、糖質過剰よりGLP-1の分泌低下こそが、肥満や糖尿病の本質に近いということが理解できるようになるはずです。

 

肥満を解消するためのダイエットという意味においても、糖尿病の食事療法のためにも非常に役に立つ基礎知識になると思いますのでしばらくお付き合いください。