糖尿病に対する麦飯の効果について

糖尿病の患者さんたちにオートミールや麦飯をすすめ、一か月後の結果が出てきています。

 

ある程度予想はしていましたが、糖質制限をすすめた時とは違いほぼ全例でA1cが改善するようなことはおきていません。A1cだけで言えばやや悪化した人のほうが多く、横ばいの人、少し改善した人もいて結果はまだバラバラです。

 

まだまだ、例えば朝食でとっていないとか、大麦の割合が少なすぎたり、わかってもらったと思っていても、間違ったやり方をしていたりするので、まだ評価できません。

 

糖質制限をしたことがあって、糖質制限はつづかなかったものの、無意識でも糖質はそれなりに控えて血糖をコントロールしてきた人は、GLP-1の分泌能が落ちている状態で、糖質量を積極的に増やせばA1cの短期的な悪化は仕方ない部分があるとは思っていました。腸内細菌の変化には最低でも2,3週間はかかります。

 

それでも、空腹時血糖が今までになく下がった人などが出てきていて、改善の兆しはあります。また、かなり糖質量を増やしているのに、横ばいの人も意味があると思います。何より、患者さん自体がしっかり糖質をとれることでの腹持ちの良さや、満足感を体感できているので、あまり不安は感じていません。

 

アルバイト先での外来で今まで食事に関してあまり節制もしていなかった糖尿病の患者さんについては、麦飯導入でA1cは下がっています。

 

どれぐらいの経過でA1cが改善していくのか、まだ未知の部分はありますが、経過はいづれにしろ報告しますので、積極的な糖質摂取に不安を覚える糖尿病の方はそれを見極めたうえで判断されてもよいと思います。

 

何にも考えずに薬だけ飲んでた糖尿病の人は、麦飯で悪化することもなく普通にA1cの数値がよくなってる。それなりに節制して来た場合に、最初は数値的には悪化しやすい。ここをどれくらいで乗り越えられるかをはっきりさせることができるかどうかがポイントになるはず。

 

骨格筋とインスリン作用

骨格筋は食後のインスリン刺激による血糖の取り込みの上でとても重要です。この骨格筋の糖の取り込みが糖尿病患者においては健常者と比べて明らかに低下していることが、糖尿病患者の食後高血糖の大きな原因の一つとされています。

 

インスリンが筋肉でその作用を発揮するためには、最初に筋細胞を栄養する微小血管系にインスリンが運ばれ、次に血管内皮を通って筋間質に運ばれる必要があります。この二つがインスリンが働くための律速段階となります。

 

最近の研究で筋肉のインスリンの働きにおいて筋微小血管が重要な役割を持つことがわかってきました。運動も筋微小血管の血流量を増やすので重要なのですが、GLP-1は直接血管内皮のレセプターに働き、血管を弛緩させて血流量を増やしインスリンの効果を増強してくれます。

 

糖尿病患者における骨格筋での糖の取り込みの低下は、運動不足が主因ではなく、このGLP-1の分泌低下によってインスリンの作用が落ちていることの方が影響していたようです。

 

更には神経や腎臓、眼などにおこる糖尿病の合併症は微小血管の障害が原因ですから、GLP-1の分泌が低下しその血管弛緩作用が低下してしまうことが大きな原因の一つなのかもしれないと考えると、血糖をコントロールするだけでは糖尿病の合併症の予防にはならなかった理由としてもつじつまが合います。

 

合併症予防の観点からもGLP-1を増やす食事療法に焦点をあてるべきだと思います。

 

年齢に伴う筋肉量の低下を防ぐためにも、その重要性は糖尿病でない健常者においても当てはまるはずです。また、筋トレをしている人にとっても役立つ知識だと思います。

 

追記
高血糖の記憶などというのは、糖質制限で合併症が予防できないことから考えだされたもので、根拠がありません。

2019年9月1日 | カテゴリー : GLP-1, 糖尿病 | 投稿者 : suzukinaikaC

糖質制限しながら水溶性食物繊維のサプリではだめな理由

腸内細菌のための水溶性食物繊維の重要性など知っている。糖質制限したままでもイヌリンなどのサプリをとれば問題ない。という主張が出てきましたが、人の体はそんなに単純ではありません。その理由を説明するためには、小腸レベルにおけるインクレチンの作用をもう少し詳しく知っておく必要があります。

 

消化管ホルモン(インクレチンと呼ぶ)GLP-1を分泌するL細胞は小腸下部(回腸)から大腸にかけて分布するわけですが、実は小腸上部(十二指腸と上部空腸)に多く存在するK細胞というのがありまして、ここからGIPというインクレチンホルモンが分泌されます。

 

このGIPもまたβ細胞のインスリン分泌作用があるのですが、糖尿病患者においてはその働きが著しく落ちてしまっている。そして、GLP-1とは逆にこのGIPはα細胞のグルカゴンの分泌を促進する働きがあるのです。だから糖尿病治療薬としては使えない。

 

大事な点はグルカゴン分泌を抑制するGLP-1を分泌するL細胞を最も大きく刺激するものが糖だということです。そしてL細胞は下部小腸にある。

 

糖は水溶性食物繊維と同時に摂取すれば、その中に包まれてゆっくり吸収されるので下部にあるL細胞にとどきますからGLP-1の分泌を促すためにはしっかりとるほど有用です。特に、GLP-1の刺激でβ細胞のさらなるアポトーシスを防ぎ、増殖を促したい糖尿病患者にとってはなおさらです。

 

しかし、水溶性食物繊維のない状態で摂取された糖は小腸上部で吸収されてしまい下部まで届かない。そしてK細胞を刺激してしまうことでグルカゴンの分泌を促進し血糖をさらに上げてしまいますから、糖尿病患者は避けなければならない。

 

これが、糖質選択の生理学観点からの必要性です。この視点が欠如しているから糖質制限には問題があると指摘しているわけです。(提唱者の無知が最大の問題)

 

実際にこのことがはっきりしたのも、前に紹介しました小腸のバイパス術による糖尿病の改善患者においてGLP-1の分泌が亢進していた事実でした。これはK細胞の存在する小腸上部をバイパスし、直接下部小腸に糖が流れ込むことによっておきていたのです。この場合の糖は有用だったわけです。

 

またペットボトル症候群という糖を多く含む飲み物を大量にとることで急速におこる糖尿病の最初の機序が、インスリンの分泌低下やインスリン抵抗性などではなく、この小腸上部のk細胞を糖が強く刺激することによっておこるGIPの分泌とグルカゴンの過剰な分泌によるものであったことなども知られています。

 

糖質と水溶性食物繊維を一緒にとらなければ意味がない理由は以上のような生理学の知識がなければ理解できないのは仕方ないかもしれませんが、医者でもなく知識もないのに糖尿病患者に勧めるようなことは本当にやめていただきたい。

短鎖脂肪酸をいっぱい作ってもらおう

腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸は健康に痩せるためには必須です。

 

短鎖脂肪酸は体脂肪の分解を促して、食事で減らしたカロリー分のエネルギーの不足を補い、交感神経節に働いて代謝を上げ、さらにGLP-1の分泌も刺激します。

 

GLP-1は脳の食欲中枢に働きかけ過食を抑えてくれますから、自分のための食事が減るのはさほど苦にもなりません。さらに筋肉の糖の取り込みを促進することで筋肉の減少も防いでくれます。

 

つまり、痩せたかったら腸内細菌にしっかり水溶性食物繊維を届けて、自分のための食事は控えれば自然に痩せます。

 

糖質量なんて関係ないから、朝からしっかり大盛りで麦ごはん食べて、いっぱい短鎖脂肪酸を腸内細菌につくってもらいましょう。

 

結果的に一日の摂取カロリーは自然にへり、腸内細菌が整う2,3週目から自然な体重減少が期待できます。

しっかり食べないと痩せられないとはこういう意味です。

 

糖尿病の人も一緒です。GLP-1は糖尿病を逆転させるカギですから、一時的な血糖上昇にビビッて、ちまちま食べているようでは、いつまでたっても改善しませんよ

GLP-1の注射について

GLP-1の働きがそんなにすごいなら、注射でどんどん良くなっていく人がもっといっぱいいるはずだと思われる人もいました。

GLP-1の働きに関する研究は、注射剤の臨床応用とともに進んできました。しかしあくまでも注射剤での投与は非生理的なもので、内因性の食事によるものと比べて効果が落ちます。

 

膵臓のα細胞に達するのに皮下注と近くの消化管から分泌されるのでは大違いです。ですから、食事でのGLP-1の分泌促進がとても重要だったんです。

2019年8月16日 | カテゴリー : GLP-1 | 投稿者 : suzukinaikaC

食事以外のGLP-1の分泌は腸内細菌が主役

食事による小腸レベルでのGLP-1の効果は食後せいぜい2,3時間でしょう。朝の空腹時血糖とは関係しません。

 

朝の空腹時血糖の上昇は大腸のレベルでのGLP-1の分泌の低下が関与します。

 

厳密な糖質制限をしていて徐々に朝の空腹時血糖が上がってくる現象は、大腸レベルでのGLP-1の分泌が落ちてきたため、グルカゴンの基礎レベルが上がってきていることが主因だと考えられます。インスリンの基礎分泌はまだまだ正常のはずです。

 

GLP-1は前にもかきましたが、半減期が非常に短いですが、常に分泌されていて、食事の時に大きく上昇し、次の食事にかけてゆっくり下がります。

ですからこのGLP-1の基礎分泌を担う場所は大腸以外にありません。実際ヒトにおいてGLP-1を分泌するL細胞の数とホルモン含量は直腸が最も多く、十二指腸の100倍といわれています。

 

GLP-1の分泌を促す食事内容はいろいろありますが、大腸にとどくのは水溶性食物繊維やレジスタントスターチ等の糖質です。だから、大事なのです。

 

GLP-1は筋肉に糖を取り込む働きをし、その基礎的な低下は筋肉量の低下をおこしやすく、糖尿病の人がサルコペニア状態に筋肉量の減少をおこす大きな原因の一つであるとも考えられています。

 

ですから厳密な糖質制限によって、朝の空腹時血糖が上がっている状態を続けることは、何の危険もないどころが、長期的には徐々に問題を起こす可能性が高いと思います。

再度グルカゴンの反乱の意味

わかりやすくするため正確な表現ではないのを承知の上でいいます。

 

グルカゴンの反乱というのは、食事をして血液中に糖が入ってくると血糖値が上がりますがそれに反応してグルカゴンが抑制されるどころか逆にもっと出てしまい、食事でとった血糖値以上に血糖を押し上げてしまうことを言います。

 

だからインスリンは通常以上に働かなければならなくなり、それをインスリンの利きが悪いという風に解釈してしまっていたわけです。実はグルカゴンが裏で足を引っ張っていたという風に理解してください。

 

グルカゴンが正常に抑制される限りにおいて、食事でどれだけの糖質をとろうとも、安全に取り入れる仕組みがあるということをまず知ってください。それどころか、使えば使うほどβ細胞は保護されます。問題の本質は、糖質量やインスリンではなくグルカゴンの反乱にあったんです。


正確に言えば、本来血糖値がグルカゴンの分泌を抑制するのではありません。β細胞からの早期のインスリン刺激やGLP-1の働きによるのですけどね。このあたりの抑制のメカニズムの破綻の研究が進んできたわけです。でもそこまで知らなくても、全体像だけでも理解できるといいんですが。

インスリンからグルカゴンへパラダイムシフト

インスリンは血糖を下げるホルモンです。グルカゴンは血糖を上げるホルモンです。

 

ということは血糖値が高くなるのはインスリンの作用が弱い時でも、グルカゴンの作用が強いときでもおこります。

 

通常であれば食事をすればインスリンが分泌され、グルカゴンは抑制され、血糖の上昇がコントロールされます。

 

今までのパラダイムはこの食事におけるインスリンの作用不足が糖尿病の原因であるとしたわけです。

その中で、糖質過剰やインスリンの利きやすさ(インスリン抵抗性)が悪くなることによるインスリン過剰が問題視されたわけです。糖質制限の基本理論もその中にこそ存在します。

 

しかし、新しいパラダイムではインスリンの作用不足が糖尿病の原因ではなかったことが立証されていました。「糖尿病はグルカゴンの反乱だった」

 

グルカゴンの抑制ができなくなることが糖尿病の本質だったんです。

ですからいかにグルカゴンを抑制するかに、治療の中心が変わったんです。

 

注射でのインスリンではグルカゴンを制御することはできません。

 

そこで注目されるのがGLP-1というわけで、別の言い方をすればGLP-1の分泌不足が糖尿病の本質かもしれない。という風につながります。

まさにこれこそパラダイムシフトかもしれません。糖尿病患者さんにとっては福音となるはずです。

 

糖質制限の考え方はその理論的根拠を失っていたんです。

現在の糖尿病治療の焦点はインクレチン関連薬

現在の糖尿病治療の焦点は、糖質とインスリンの関係ではなく、インクレチン関連薬(GLP-1)に完全にシフトしています。

 

そもそも糖質制限の理論がつくられた時、インクレチン関連薬などはありませんでしたし、その仕組みについてもよくわかっていなかったのです。そして2009年にインクレチン関連薬(GLP-1分解酵素阻害薬)が臨床応用され、さらにはGLP-1の合成注射薬も臨床に使われるようになりました。昔の治療ではうまくいかない例をたくさん作ってしまったのも事実ですが、現在はいろいろなことがわかってきました。

 

しかし益々重要性を増すGLP-1の働きを軽視したまま、糖質過剰が問題とか、インスリンは毒だとか、1gの糖質で血糖がいくつ上がるとか、今やもう時代おくれの議論を延々しているのが糖質制限の指導者です。早くそこから抜け出して、新しいことを知ってほしいと思います。

 

そしてそのGLP-1の分泌を増やす食事法に焦点を当てれば、薬や注射に頼るより、より本質的な治療ができるはずというのが自分の考えです。

2019年8月12日 | カテゴリー : GLP-1, 糖尿病 | 投稿者 : suzukinaikaC

糖質制限で痩せる理由

糖質制限で痩せるのは、糖質摂取とインスリンの分泌が太る原因だったからではありません。

 

必要な糖質を摂取しないことで、GLP-1の働きを介したグルカゴン分泌の抑制を解除することによる異化作用です。

 

だから、いわば禁じ手なんです。

 

そんな無茶な方法などしなくても、GLP-1の働きをしれば、自然に痩せる方法があることが理解できます。

 

そこまでわかれば、もはや糖質制限になんの意味もありません。

 

もう、結論はでているんです。

2019年8月10日 | カテゴリー : GLP-1, 糖質制限 | 投稿者 : suzukinaikaC