糖質制限の嘘

健常者では1gの糖質摂取で何ミリグラム血糖が上昇するとか、糖尿病患者では何ミリグラムとか糖質制限ではよく言われますがこれは全く意味がありません。健常者と2型糖尿病患者8人を比較した実験が紹介されていました。

 

健常者の場合、経口のブドウ糖負荷量を25g、75g、125gと増加しても血糖の山はほとんど変わらないのです。糖処理能力がそれぞれ平均で36%、53%、65%と負荷量に比例して増加するためです。

 

この場合の糖処理能力とは、静脈注射で同様の血糖の山を作るのに必要な糖の量を差し引くことで計算することができます。これがまさに腸管因子、つまりインクレチンの働きです。

 

ところが2型糖尿病ではブドウ糖の負荷量に比例して血糖の山が高くなり、糖処理能力はそれぞれ0%、11%、36%と極めて低い値でした。

 

つまり糖尿病患者において落ちているのはこのインクレチン効果であるので、これを回復させるための食事を工夫することに価値があります。糖質量を減らしていてはますますインクレチン効果は衰えていくだけです。血糖のコントロールにはインスリンの分泌能力よりインクレチンの働きの低下の影響の方が大きいのです。

 

糖質制限はなぜ糖尿病患者の血糖が高くなるかというその最初から、基本認識が間違っているのです。

 

このことは江部先生のお好きな言葉で言えば生理学的事実です。ADAもエビデンスも関係ありません。一個人の見解でもありません。

グルカゴンの反乱の意味

グルカゴンの反乱の意味をもう少し分かりやすく説明します。

 

正確な表現を心がけようとすればするほど、わかりにくくなるようですので、断定と思い込みもたくさん混じった僕の独り言だと思って読んでください。

 

肥る原因は食べすぎと皆さん思っているのでしょうが、そうではなかった。正しくは過度に精製された状態(水溶性食物繊維がない状態)でとった糖質が問題であったわけで、水溶性食物繊維と一緒にとる糖質はむしろ足りていなかった。この不足が様々な代謝異常を起こす原因だったとは。

 

糖質はその性質上、水溶性食物繊維に含まれつつゆっくり吸収される必要があり、それによって安全に、β細胞にも負担をかけず、エネルギー源として利用する仕組みがきちんとあったわけです。だからこっちの糖質はむしろ増やさないといけなかった。同時に精製糖質の過剰はたしかに問題なので、この糖質を制限することは全く正しいのです。しかし増やすべき糖質まで控えてしまうことは、エネルギー的にも、腸内細菌叢にとっても非常にダメージが大きかった。僕が問題にしているのはこの点です。

 

精製糖質は小腸上部で吸収されてしまいます。ここで吸収されるとグルカゴンの分泌が刺激されますから、同時にインスリン分泌も刺激されても血糖コントロールするには非常に効率が悪い。グルカゴンが肝臓から糖を血中に放出してしまうわけですから、インスリンは余計に働かなければならなくなります。部屋を掃除しているのに、同時に散らかすやつがいるようなもので、たまったものではありません。筋肉も糖を取り込む準備ができていないのでインスリンはたくさん必要になります。

 

しかしここを水溶性食物繊維にふくまれて通過していけば、糖は小腸下部まで達し、そこでGLP-1が刺激されることによって、筋肉も糖の取り込みをする準備を始めますし、血糖が上がる前にしっかりグルカゴンの働きも抑えます。それによって少しのインスリンで血糖をコントロールすることができますから、高インスリンによっておこる代謝の異常や過度の同化(肥るってこと)はいくら糖質をとってもこの場合おこらないのです。

 

他にもいろいろな要素がありますが、ここまでの部分だけでも一律な糖質制限には問題があるのです。

 

常に過度に刺激されたα細胞(グルカゴンの分泌細胞)はやがて暴走を始めます。これはインスリンの分泌が減ってしまってきた糖尿病状態でおこるのではなく、まだまだβ細胞が全く正常に分泌されているごく初期から起こっていた.そしてその暴走にあわせて、インスリンがどんどん必要になって高インスリン状態が続き、それがいろいろな病理を引き起こしていった。つまりインスリンはぜんぜん悪者ではなかったんです。グルカゴンの反乱こそが肥満や糖尿病の原因であったということになります。

「堀の中の患者様」刑務所医師が見た驚きの獄中生活       日向正光著より抜粋 その1

前任の医師からヒントをもらい日向医師は糖尿病受刑者を何人か診察すると、確かに血糖値がよくなっていることに気がついた。

 

でも、これって当たり前だよな、強制労働させられて、食事のカロリーも少なくて、規則正しい生活をしているのだから、、、と初めは考えた。だが毎回検食する受刑者の食事を思い浮かべると、麦飯に汁物、副菜ととてもバランスよく、おいしいのだが同時にとても食べきれないほど分量が多いのだ。

 

彼が所内の職員に聞いたところ、受刑者は作業に応じて1日に2220から2620kcalといわれたが、もっと多い気がして管理栄養士のところまで行って詳しく尋ねると実際はさらに400kcalほど、食事くらい良くしないと暴動が起きかねないのでという理由で増やしていたことを知る。なんととんでもない量を食べていたのだ。

 

受刑者の実際の食事も紹介されていた。ハンバーグやカレーライス、うどんや魚フライなど献立も多彩でメニューも豊富であり、味も意外においしいと書かれている。

 

とにかく受刑者たちは日々こんなものを食べ、日々健康を回復していく。もちろん初めから食事制限されている受刑者もいたが、制限されていなくても血糖値が改善している受刑者もたくさんいた。

 

過去のカルテを引っ張り出して調べてみると、驚異的に改善しているデータが次々と確認された。何もしないで勝手に血糖値が改善した者、内服薬が減らせたり中止で来たりした者、中にはインスリンすら中止できた者までいた。それも一人や二人ではない。全体で100人以上いた糖尿病受刑者のうち、実に8割以上の驚くべき数値で改善していたのだ。

 

これは大変なことではないか、と彼は大学の恩師に相談してみる。しかしそんなのあたりまえじゃないか、論文にはならないよと笑われた。

しかしめげない彼はひとり調査研究にたちむかうことを決めたのだ。続く