鈴木内科クリニック・鈴美館

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肥満の原因

栄養不足とインスリン過剰分泌による代謝異常

栄養不足の改善が必要である(程度にもよりますが)ことと、インスリン分泌過剰による代謝の異常があることは別の問題ですが相互に関連があります。

一方だけならそちらに対処すればよいだけですから問題ありません。

しかし同時に存在する場合、どちらかを優先しなければならないということもないと考えていますが、これには反対の立場の人が多いようです。

栄養不足を招いている原因の一つにインスリン過剰による代謝異常がある場合、これを後回しにはできないと思うからです。

逆にインスリン優位の代謝異常を招く原因に栄養不足の問題もありますから、こちらも無視してはいけないということも言えます。

どちらを優位に改善をはかるかを個人個人で判断すればよいと思っています。

 

一度増えた脂肪細胞は減ることはない?

過去には一度増えた脂肪細胞は減ることはないといわれていました。

だから一度肥った人は脂肪細胞の中の脂肪の量が減っただけでまたすぐ肥りやすいとか、痩せている人はもともと脂肪細胞が少なく肥りにくいのだとか、いろいろなことが言われていましたが、今ではそれが間違いであったことがわかっています。脂肪細胞は他の皮膚などの細胞と同じように断続的に新陳代謝して、新しい細胞に入れ替わったり、必要に応じて増えたり減ったりしていたわけです。
脂肪細胞はおよそ15%の部分がミトコンドリアや核、細胞膜などの除脂肪組織であり、残りの85%脂肪滴の部分になります。このことは例えば10㎏の脂肪細胞が減少した場合、実際の脂肪の減少分は8.5㎏で1.5㎏は徐脂肪体重の減少になるということを意味します。つまり、脂肪細胞の減少だけでも除脂肪体重の減少はおきるということです。

(THE ART AND SCIENCE OF LOW CARBOHYDORATE PERFORMNCE Jeff Volekより)

 

肥満の問題と質的栄養不足の問題

質的栄養不足のある場合(ビタミン、ミネラル、タンパク不足)それを食事によって治療することはもちろんとても大切です。

しかし肥満症の治療と質的栄養不足の治療は基本的に別の物です。

質的栄養不足の治療をしたいのなら、カロリーあたりの栄養密度を最大限にすべきであり、肥満を治療したいのなら、高インスリン血症、インスリン抵抗性、レプチン抵抗性の治療、つまり肥満症を治療すべきです。

肥満と質的栄養不足が同時に存在することはもちろんあります。

しかし必ず同時に存在するわけでもありません。

 

肥満の問題と質的の問題は完全に別の問題であり、その二つを混同すべきではないというのがDr Fungの見解です。

 

 

痩せている人と肥っている人の違い

痩せている人はバター珈琲や生クリーム、チーズなどを食事以外の時に間食として食べても肥りませんが、肥っている人はさらに肥ってしまいます。

 

この違いはなぜ起こるのでしょうか?

 

人を肥らせるホルモンはインスリンですが、体脂肪が増加するとレプチンというホルモンが分泌され、これは食欲中枢に働いて体重を増やさないようにします。このネガテブフィードバック機能によって過度に脂肪を蓄えない仕組みがあるわけです。

インスリンとレプチンは本質的に反対に働き、一方は脂肪を蓄え、一方は脂肪を蓄えさせないほうに働きます。しかし果糖をとり続け、インスリン抵抗性が高まり、インスリンレベルが高い状態が続くと、レプチンもまた持続的に分泌されることになります。持続的なレプチンの分泌はレプチンに対する抵抗性を生じることになります。(持続的な刺激は抵抗性を生む)肥満した人にはレプチン抵抗性があり、痩せた人はレプチンに対する感受性が高いのです。

 

注)外因性にレプチンを投与してもレプチン抵抗性のある肥満症の治療としては効果がないことは確かめられています。

 

食事性の脂肪は、タンパク質や炭水化物とは異なる経路で代謝されます。腸管からカイロミクロンとして吸収され、リンパ管を通って直接全身をめぐる血流に入ります。門脈を通らないのでインスリンの働きは必要とせず、脂肪組織などに直接吸収されます。

ではやはり脂肪をたくさん取れば肥りそうですが、痩せた人(レプチン感受性が高い人)ではそれは起こりません。脂肪をたくさん食べると脂肪細胞に一旦蓄積はされますが、インスリンは上昇しません。レプチンが分泌されレプチン感受性の高い痩せた人に食べるのをやめさせてしまいますし、無理に食べ続けると新陳代謝があがり、余分なエネルギーは消費されてしまいます。

一方で肥った人(レプチン抵抗性のある人)ではそうはなりません。

脂肪をとってもインスリンは上昇しませんが、脂肪組織にやはり直接蓄えられます。レプチンは分泌されますがレプチン抵抗性があるため体は反応せず、食欲も落ちなければ、代謝が上がることもありません。つまり更に肥ってしまいます。

つまり痩せていてレプチン感受性の高い人はチーズやバターなどの高脂肪の物をさらに食べても体重を増やすことはできませんが、体重を減らそうと考えていて肥満やインスリン抵抗性、レプチン抵抗性の問題をすでにもっている人にとっては食事以外に余分な脂肪をとることはよくないということです。

注意点ですが低脂肪の食事を勧めているわけではありません。低糖質高脂肪適量タンパク質の食事を満足いくまでしっかり食べることが基本です。
脂肪はだれにとっても肥らないという誤解から、もしくはケトン体を上げるために脂肪(オイル、生クリーム、バター)を食事以外にとることは、肥満の問題がある人は避けるべきであるという意味です。
Who needs to avoid Fat Bombs and BPC? by Jason Fung より

 

加工された果糖

野生の状態で肥満していることは、食料が不足した状態になったとき、有利ではありません。

肥満したライオンは狩りにおいて不利ですし、肥満した草食動物もまた捕食されやすくなり、生き残る上で不利になります。肥満にメリットはありませんので、倹約遺伝子の必要もありません。倹約遺伝子仮説は間違いであるとDr Fungは主張しています。

一年をとうして、食料の豊富なポリネシアの島々の人々も、炭水化物をとりながら、肥満はまれでした。肥満が増えたのは、食料が豊富になった為ではなく、運動量が減ったためでもなく、加工食品を取るようになってからです。

加工された果糖が一番の問題だということになります。

 

肝と膵への脂肪蓄積

アジア人は北アメリカ人より低いBMIで2型糖尿病を罹患する傾向があり、中国人の平均2型糖尿病のBMIは23.7である。
ここでの重要な要因は総脂肪量ではなく、肝と膵への脂肪の蓄積である。
一般的な2型糖尿病と比較的やせ形の2型糖尿病の病理は似ており、LCHFとIF(間欠的ファステング)による食事介入は有効である。

とDr Fungは言っており、臨床例も紹介しています。彼自身中国系ですし、The Obesity Codeの枠組み、考え方はアジア系の人たちの臨床例も数多く経験したうえでの議論であることは明らかだと思います。

果糖(フルクトース)の問題点

果糖(フルクトース)は血糖値を上昇させないし、インスリンレベルを上昇させない。それでは果糖はよい糖かというと実はよくないということはよく知られています。
フルクトースの問題点はその代謝にあります。

もしショ糖(砂糖の主成分、フルクトースとグルコースが一対一の割合)をとれば体のすべての細胞でグルコースは利用することができますが、フルクトースはほとんど利用することができず、肝臓で代謝されます。

フルクトースはグルコースに転換することもできますが、すでにグルコースがたくさんあれば、直接脂肪に転換されます。つまりグルコースよりも脂肪肝をつくりやすく、それがインスリン抵抗性の原因となるため、フルクトースは肝臓の世界では大きな問題であり、グルコースより20倍悪いとDr Fungは言っています。加工食品に含まれる異性化糖(果糖ブドウ糖液)はさらに危険です。(Dr. Jason Fung – ‘A New Paradigm of Insulin Resistance’)

 

お米の主成分はでんぷんであり、グルコースがたくさん集まったものです。当たり前ですがフルクトースは含まれていません。よく見るご飯と角砂糖の山の比較の写真は、単に糖質量(カロリー)の比較であり、その代謝とインスリン抵抗性の原因という観点から見た場合、同等に扱うべきものではないということになります。

 

糖質そのものは肥満の原因ではない

結論を言えばThe obesity Code の中での糖質制限や間欠的ファステングは肥満の治療のための方法論であるという位置づけです。

糖質そのものは肥満の原因ではありません。

なぜなら糖質をとっていても肥満にならない人はいくらでもいるからです。

その事実は無視してはいけない。肥満の本当の原因は西洋化した食品としています。

この場合の西洋化とは肉食や高脂肪の食品のことではなく、加工食品のことです。

カロリーあたりのビタミン、ミネラルなどの栄養素に乏しい食材に様々な食品添加物が加えられた食品です。

これらの食品は糖質を多く含んでいた場合はもちろんのことですが、低糖質なものであって短期的には体重増加につながらないようでも、長期的には体重のセットポイントを狂わしてしまいます。

砂糖や精製された穀物(特に緑の革命以降の品種改良された小麦)はその中毒性からも特に問題視していますが、お米に関してはかなり寛容です。

この点はやはりほっとしたというか、うれしかったです。

糖質制限が目的化してしまって、加工食品に寛容になってしまった現在の流れはやはり修正していかなければならないことを、糖質制限をすすめてきた自分としては強く感じています。

 

糖質中毒からの離脱

インスリン抵抗性の治療において、まず、最初に糖質制限つまり断糖は糖質中毒からの離脱のために絶対に必要です。

ここを否定されては話になりません。

この時期は、肉の過食も、糖質制限スイーツも有効な手段だと思います。

ただし、ある程度糖質中毒であったことがはっきりわかるぐらい自覚症状の改善があり、さらに体重の減少が一旦落ち着いてしまった段階では、糖質中毒に戻るリスクを少なくするために、糖質選択にきりかえて、質の良い食材をしっかりととり、食事の間隔をあけることで、栄養の質と吸収力を改善させることに重点を移した方がよいと思います。

これでさらにケトン体を利用する時間も増えますから生活の質、活動の質も向上していくと思います。

いろいろな方法はありますから、その人に合ったやり方でよいと思いますが、同じやり方にこだわる必要もありません。

倹約遺伝子仮説では肥満症の説明にはならない

肥満の遺伝的かたよりを説明する最初の試みは倹約遺伝子仮説である。

それは1970年代に一般的になった。この仮説では、すべての人間が進化的に生き残るメカニズムとして体重を増やす傾向を持っているとしている。

議論はこのように進む。

旧石器時代、食べ物は少なく手に入れるのは困難だった。飢えはもっとも強く基本的な人間の本能の一つだ。倹約遺伝子はわれわれにできるだけ食べるように強制する。そして体重を増やすこの遺伝子を持っていることは生き残るうえで有利である。

体の食べ物の蓄積(脂肪)を増やすことは食べ物が少なくなったときに、より長く生き残れる。それらを蓄える代わりに、カロリーとして燃やす傾向のある人々は選択的に取り除かれてきたのだとする。

しかし倹約遺伝子は現代の何でも食べられる時代に適応すると、体重を増し、肥満になるにつれて病気になってしまう。

しかし我々は単純に脂肪を増やせという遺伝子の勧めに従っているのだ。

この倹約遺伝子仮説の欠陥を考察する。

最も明らかな問題は、野生の状態で生き残ることは体重が少ないのも多すぎることにも左右されない。

太った動物は動きが鈍く痩せた仲間より機敏ではない。

捕食者は捕まえるのがより難しい痩せた獲物より、太った獲物を好んで食べるだろう。同じように太った捕食者はやせてすばしっこい獲物を捕らえることはより困難であるとわかるだろう。体の脂肪は必ずしも生き残るうえで利益があるわけではなく、かわりに非常に不利益にもなりうる。

太ったゼブラやガゼルがいますか?

太ったライオンやタイガーがいましたか?

 

人間が遺伝的に食べすぎるように仕組まれているという仮説は正しくない。ただ空腹のホルモンの信号に従ってたくさん食べたら、食べるのやめる時ををわれわれに伝えるたくさんのホルモンがある。

 

食べ放題のセルフサービスの食事のことを考えてみよう。

お腹いっぱいになってしまうので単純にやめずに食べ続けることは不可能だ。

食べ続ければ気分が悪くなるかもどしてしまうかもしれない。

たくさん食べさせる遺伝的傾向などはない。

代わりに食べすぎに対して強力な防御機構が内蔵されている。

倹約遺伝子仮説では慢性的な食糧不足が肥満になるのを妨げていたと仮定している。

しかし、伝統的な社会では一年中豊富な食糧があったところはたくさんある。

 

例えば、トケラウ、南大西洋の辺鄙な部族ではココナッツやパンノキ、魚などで生活しているがこれらは一年中手に入れられる。

にもかかわらず産業が興り伝統的な食事が西洋化するまでは、彼らの中に肥満は見られなかった。現代の北アメリカでさえ、大恐慌以降広範囲な飢饉は一般的でない。

しかし肥満の増加は1970年代だけから起こったのだ。

 

野生動物の世界では、正常な生活サイクルの部分として例えば冬眠するような場合を除いて、豊富な食糧があるときでさえ病的な肥満はまれである。

豊富な食糧は個体数の増加をもたらすが、サイズを巨大化させたりはしない。

ラットやゴキブリで考えてみよう。食べ物が減ればラットの数が減り、食べ物が増えればラットの数は爆発する。正常以上の大きさのラットは多くなるが、病的な肥満のラットではない。

 

非常に高い体脂肪率を持つことは生き残るうえで利点はない。

男性のマラソンランナーは5%から11%の体脂肪だ。この量でも一か月以上食べないで生き残るのに十分なエネルギー量である。

 

ある種の動物は定期的に太る。例えば冬眠に入るクマが定期的に体重を増やすがそうしても病気にはならない。

しかし人間は冬眠はしない。太ることと肥満であることでは重要な違いがある。

肥満は健康上有害な結果をもたらすまで太っている状態である。

クマにくわえてクジラやセイウチなど、他の脂肪を蓄えている動物は肥っているが健康上の問題がないので肥満ではない。彼らは実際、遺伝的に太るようにプログラムされている。

 

我々はそうではない。人間において進化は肥満に対して好意的ではなく、むしろ痩せている方を好む。

 

倹約遺伝子仮説では肥満症の説明にはならない。

では何が説明できるのか?

肥満の根本的原因で主役となるのは、高インスリン血症による複雑なホルモンバランスの乱れである。

赤ん坊のホルモンの輪郭は、生まれる前の母親の体の中での環境に影響され、高いインスリンレベルの傾向に設定されると、のちの人生での肥満に関連してくる。

カロリー不均衡としての肥満症の説明では、食べることや運動することは自発的な行動であるので、単純にいってこの主とした遺伝子的効果を考慮に入れることができない。

肥満症がホルモンの不均衡によるとすると、より効果的にこの遺伝子効果も説明できる。

 

The Obesity Code より