鈴木内科クリニック・鈴美館

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糖尿病

小胞体ストレス

小胞体とは細胞内にある膜構造の小器官で、細胞内で作られたタンパク質の原型を折りたたんで加工し、完成させるところです。膵臓のβ細胞はインスリンというタンパク質を合成し、分泌するのが仕事ですから、この小胞体がとても発達しています。この小胞体でのタンパク質の加工がうまくできなくなると、細胞内に不完全なタンパク質が貯まってしまいます。これを小胞体ストレスと呼んでいます。この不完全なタンパク質を排除する仕組みはありますが、過度、長期間に及ぶと排除しきれなくなり、不完全なタンパク質が周囲の環境に影響するのを防ぐため、細胞自体を壊してしまいます。(アポトーシス)

 

この小胞体ストレスはいろいろな病気の原因になるとされ注目されています。(ノーベル賞の話題が多い時期ですが、この小胞体ストレスの機序についても日本人研究者がかかわっており、ノーベル賞候補にもなっているようです)膵臓のβ細胞はとくに小胞体ストレスには敏感で、β細胞のアポトーシス(細胞死)は糖尿病を引き起こします。その原因として有力なのが飽和脂肪酸で、このことを脂肪毒性と呼んでいます。

 

糖尿病の食事療法において飽和脂肪酸の制限が世界中で推奨されているのはこのためです。

 

 

「Glucagon-like peptide-1 (GLP-1) 産生に対する小 胞体ストレスの影響の研究」という非常に興味深い論文がありました

 

GLP-1を分泌するL細胞にもまたβ細胞と同様のことがおこっていたようです。マウスの実験ですがパルミチン酸(飽和脂肪酸、動物性脂肪に豊富)が小胞体ストレスを介してGLP-1の分泌を低下させるというものです。さらにオレイン酸(一価不飽和脂肪酸、オリーブ油に豊富)はこれらの、パルミチン酸による小胞体ストレスやGLP-1産生抑制作用を抑制するというものでした。地中海式食事法のメリットをうらずけるような結果です。

 

この結果は肥満症のヒトにおける GLP-1 分 泌低下の一つの理由を示唆する結果であるとしており、動物性脂質を多く含む食事によって、 小腸 L 細胞において小胞体ストレスが生じ、GLP-1 産 生・分泌が減少し、糖尿病のリスクが増大する可能性を示唆するとしています。また、今 回マウスの検討から、8 週間の高脂肪食負荷により GLP-1 分泌が減少していた。しかし血中のインスリン濃度は、空腹時およびグルコース経口投与時において、コントロー ル食群に比べて増加しており膵 β細胞の減少が始まる前から小腸において負荷がかっている可能性が示唆された。この結果は、糖尿病の発症メカニズムにおいて GLP-1 分泌減少が早期に起こり、その結果、膵β細胞の小胞体ストレス緩和作用が減少している可能性が考えられるとしています。

再度「糖尿病はグルカゴンの反乱だった」本の意義

グルカゴンの反乱の本に対する評価は、立場によってかなり違うようです。もう一度僕の見解をまとめておきます。

 

1 日本においては麦飯を食べていた戦前は糖尿病はまれな疾患であった。麦飯を食べなくなった1955年から1965年の時点から、糖尿病の有病率が増加した。そして、麦飯を強制的に食べさせられる環境(刑務所)に置かれた糖尿病の人は、8割の高確率で改善がみられる。

 

2 大麦に豊富な水溶性食物繊維であるβグルカンをある量、ある期間(3から6g、4週間から12週間)人に食べさせる臨床実験が近年すでに数多くなされており、耐糖能の改善に有効であることが証明されている。

 

3 βグルカンから腸内細菌の働きによって短鎖脂肪酸がつくられ、この短鎖脂肪酸が大腸のL細胞からGLP-1の分泌刺激となることがわかったのは最近のことである。以前は小腸下部のL細胞でおこるGLP-1の放出に焦点が置かれており、これをインクレチン効果と呼んでいたが、大腸におけるL細胞に関してはその役割ははっきりしていなかった。この部分は腸内細菌やβグルカンの研究者の果たした役割が大きい。セカンドミール効果の主役は大腸のL細胞である。

 

4 糖尿病の治療薬としての観点からGLP-1自体の研究も進み、その多様な役割がはっきりしてきた。より少ないインスリン量で血糖をコントロールするためにGLP-1が重要となる。

 

ここまでが本を見る前に知りえた事実でした。

 

5 最後にグルカゴンの反乱の本に書かれていたことが、決定的であった。この本の著者は水溶性食物繊維に焦点を絞るべきことには気づいていない。しかし、GLP-1の分泌を増やすことによって、通常状態にグルカゴンを制御できれば、かなり進行しインスリン分泌が落ちてしまった糖尿病の患者においても血糖をコントロールできうる可能性に対し理論的な根拠を与えてくれたのは大きい。

ネズミの実験が多いとか、人のデータが少ないという反論に対しては、1、と2の視点から見ればすでに十分あるのである。

また、グルカゴン自体は悪くないのではという批判もあったがそれも的外れであり、だれもグルカゴンを過度に抑制すべきとは言っていない。異常分泌がコントロールされるべきでそれにはインスリンだけでなく、GLP-1が深くかかわっていたのだ。

 

6 つまりグルカゴンの反乱の本の位置づけは理論的な仮説というより、すでに確認されていることの理論的な裏付けになっているのである。そしてそのことは本の著者も気がついていないようなのだ。ここが勘違いされる点である。

糖尿病に対する麦飯の効果について

糖尿病の患者さんたちにオートミールや麦飯をすすめ、一か月後の結果が出てきています。

 

ある程度予想はしていましたが、糖質制限をすすめた時とは違いほぼ全例でA1cが改善するようなことはおきていません。A1cだけで言えばやや悪化した人のほうが多く、横ばいの人、少し改善した人もいて結果はまだバラバラです。

 

まだまだ、例えば朝食でとっていないとか、大麦の割合が少なすぎたり、わかってもらったと思っていても、間違ったやり方をしていたりするので、まだ評価できません。

 

糖質制限をしたことがあって、糖質制限はつづかなかったものの、無意識でも糖質はそれなりに控えて血糖をコントロールしてきた人は、GLP-1の分泌能が落ちている状態で、糖質量を積極的に増やせばA1cの短期的な悪化は仕方ない部分があるとは思っていました。腸内細菌の変化には最低でも2,3週間はかかります。

 

それでも、空腹時血糖が今までになく下がった人などが出てきていて、改善の兆しはあります。また、かなり糖質量を増やしているのに、横ばいの人も意味があると思います。何より、患者さん自体がしっかり糖質をとれることでの腹持ちの良さや、満足感を体感できているので、あまり不安は感じていません。

 

アルバイト先での外来で今まで食事に関してあまり節制もしていなかった糖尿病の患者さんについては、麦飯導入でA1cは下がっています。

 

どれぐらいの経過でA1cが改善していくのか、まだ未知の部分はありますが、経過はいづれにしろ報告しますので、積極的な糖質摂取に不安を覚える糖尿病の方はそれを見極めたうえで判断されてもよいと思います。

 

何にも考えずに薬だけ飲んでた糖尿病の人は、麦飯で悪化することもなく普通にA1cの数値がよくなってる。それなりに節制して来た場合に、最初は数値的には悪化しやすい。ここをどれくらいで乗り越えられるかをはっきりさせることができるかどうかがポイントになるはず。

 

アメリカ糖尿病学会のガイドラインについて

アメリカ糖尿病学会(ADA)の食事指導のガイドラインをめぐって、いろいろ論議がおこっていますが、本来そんなにわかりにくい話ではありません。
重要なのは3つぐらいです。

 

1 全粒粉の穀物、野菜、果物、豆などから炭水化物をとり、精製された穀物や砂糖などは避ける。

 

2 飽和脂肪酸やトランス脂肪の摂取はできるだけ控える

 

3 画一的なカロリー制限は意味はなく、食事の様式も地中海式、ダッシュ食、ベジタリアン食、低糖質食など個人の嗜好や生活様式に合わせて選択してもよい。

 

ガイドラインが変化しているといわれていますが、1,2に関しては変化していません。低糖質食を選択してもよいというのは1,2を満たしている範囲においてという意味です。

 

従来の日本の糖尿病の食事指導は、カロリー制限にかたよっており、さらに全粒粉穀物を重視していませんでしたので修正する必要があります。

 

江部医師のスーパー糖質制限では1,2の基準を満たしません。ADAのいう低糖質な食事とは、日本で広まっている糖質制限とは異なるものです。

骨格筋とインスリン作用

骨格筋は食後のインスリン刺激による血糖の取り込みの上でとても重要です。この骨格筋の糖の取り込みが糖尿病患者においては健常者と比べて明らかに低下していることが、糖尿病患者の食後高血糖の大きな原因の一つとされています。

 

インスリンが筋肉でその作用を発揮するためには、最初に筋細胞を栄養する微小血管系にインスリンが運ばれ、次に血管内皮を通って筋間質に運ばれる必要があります。この二つがインスリンが働くための律速段階となります。

 

最近の研究で筋肉のインスリンの働きにおいて筋微小血管が重要な役割を持つことがわかってきました。運動も筋微小血管の血流量を増やすので重要なのですが、GLP-1は直接血管内皮のレセプターに働き、血管を弛緩させて血流量を増やしインスリンの効果を増強してくれます。

 

糖尿病患者における骨格筋での糖の取り込みの低下は、運動不足が主因ではなく、このGLP-1の分泌低下によってインスリンの作用が落ちていることの方が影響していたようです。

 

更には神経や腎臓、眼などにおこる糖尿病の合併症は微小血管の障害が原因ですから、GLP-1の分泌が低下しその血管弛緩作用が低下してしまうことが大きな原因の一つなのかもしれないと考えると、血糖をコントロールするだけでは糖尿病の合併症の予防にはならなかった理由としてもつじつまが合います。

 

合併症予防の観点からもGLP-1を増やす食事療法に焦点をあてるべきだと思います。

 

年齢に伴う筋肉量の低下を防ぐためにも、その重要性は糖尿病でない健常者においても当てはまるはずです。また、筋トレをしている人にとっても役立つ知識だと思います。

 

追記
高血糖の記憶などというのは、糖質制限で合併症が予防できないことから考えだされたもので、根拠がありません。

大麦パンの効果の実験

本の中での実験の紹介。

 

食物繊維を多く含む大麦パンと精製した小麦パンの効果を20人の健常者で比較。3日間連続して食べ、4日目の朝、同じ試験食の後に採血した。全員が2種類のパンを食べるクロスオーバー試験。

 

結果

大麦パンで精製小麦粉パンに比べ食後血糖とインスリンはそれぞれ22%、17%低下しインスリン感受性が25%改善した。空腹時の短鎖脂肪酸は18%増え、食後のGLP-1は56%増加した。

 

これらのことから全粒粉の大麦パンは短期間に腸管ホルモンの分泌を高めることで、食欲抑制、インスリン感受性を高め、糖代謝を改善することが示された。

 

これは健常者の実験で短期でも効果がありとしたものですが、逆に28人の高インスリン血症を有する糖尿病予備軍について、小麦全粒粉のシリアルとこれを含まないシリアルを毎日摂取させ一年間にわたって3か月ごとに調べた調査も紹介されており、GLP-1が25%増えるのに1年かかったことから、腸内細菌が最適な発酵環境になるには時間がかかると推測されています。

 

しかしこれはもう気がつかれたと思いますが、小麦全粒粉であることが問題で、大麦を使用していればこんなには時間を要しなかっただろうと思います。このことから稙田先生はあの日向先生の水溶性食物繊維に焦点をあてた論文はご存じないと思います。ここがつながっていれば本の内容もより食事に焦点があてられたものになっていたと思うのです。

糖質制限の嘘

健常者では1gの糖質摂取で何ミリグラム血糖が上昇するとか、糖尿病患者では何ミリグラムとか糖質制限ではよく言われますがこれは全く意味がありません。健常者と2型糖尿病患者8人を比較した実験が紹介されていました。

 

健常者の場合、経口のブドウ糖負荷量を25g、75g、125gと増加しても血糖の山はほとんど変わらないのです。糖処理能力がそれぞれ平均で36%、53%、65%と負荷量に比例して増加するためです。

 

この場合の糖処理能力とは、静脈注射で同様の血糖の山を作るのに必要な糖の量を差し引くことで計算することができます。これがまさに腸管因子、つまりインクレチンの働きです。

 

ところが2型糖尿病ではブドウ糖の負荷量に比例して血糖の山が高くなり、糖処理能力はそれぞれ0%、11%、36%と極めて低い値でした。

 

つまり糖尿病患者において落ちているのはこのインクレチン効果であるので、これを回復させるための食事を工夫することに価値があります。糖質量を減らしていてはますますインクレチン効果は衰えていくだけです。血糖のコントロールにはインスリンの分泌能力よりインクレチンの働きの低下の影響の方が大きいのです。

 

糖質制限はなぜ糖尿病患者の血糖が高くなるかというその最初から、基本認識が間違っているのです。

 

このことは江部先生のお好きな言葉で言えば生理学的事実です。ADAもエビデンスも関係ありません。一個人の見解でもありません。

糖尿病はグルカゴンの反乱だった 栄養チャンネルNobunaga

 

https://www.youtube.com/watch?v=oGG4kD044Qw&t=84s

 

https://www.youtube.com/watch?v=topdJKmPDo0&t=915s

 

栄養チャンネルNobunaga お勧めです。

 

オートミールの紹介動画のコメントで、こんなことを書かれている人がいました!

https://www.youtube.com/watch?v=rLNcLioKnoQ&t=103s

 

オートミール始めて二年くらい経ちますがA1Cが10あったのが今は5.6位になりました(もちろん見直した部分はそれだけではないですが、、、)オートミールすごいですね~主治医にこんな人見たことないと言われました。よくわからなかったけどグルカゴンに作用してよかったんですね

グルカゴンの反乱の意味

グルカゴンの反乱の意味をもう少し分かりやすく説明します。

 

正確な表現を心がけようとすればするほど、わかりにくくなるようですので、断定と思い込みもたくさん混じった僕の独り言だと思って読んでください。

 

肥る原因は食べすぎと皆さん思っているのでしょうが、そうではなかった。正しくは過度に精製された状態(水溶性食物繊維がない状態)でとった糖質が問題であったわけで、水溶性食物繊維と一緒にとる糖質はむしろ足りていなかった。この不足が様々な代謝異常を起こす原因だったとは。

 

糖質はその性質上、水溶性食物繊維に含まれつつゆっくり吸収される必要があり、それによって安全に、β細胞にも負担をかけず、エネルギー源として利用する仕組みがきちんとあったわけです。だからこっちの糖質はむしろ増やさないといけなかった。同時に精製糖質の過剰はたしかに問題なので、この糖質を制限することは全く正しいのです。しかし増やすべき糖質まで控えてしまうことは、エネルギー的にも、腸内細菌叢にとっても非常にダメージが大きかった。僕が問題にしているのはこの点です。

 

精製糖質は小腸上部で吸収されてしまいます。ここで吸収されるとグルカゴンの分泌が刺激されますから、同時にインスリン分泌も刺激されても血糖コントロールするには非常に効率が悪い。グルカゴンが肝臓から糖を血中に放出してしまうわけですから、インスリンは余計に働かなければならなくなります。部屋を掃除しているのに、同時に散らかすやつがいるようなもので、たまったものではありません。筋肉も糖を取り込む準備ができていないのでインスリンはたくさん必要になります。

 

しかしここを水溶性食物繊維にふくまれて通過していけば、糖は小腸下部まで達し、そこでGLP-1が刺激されることによって、筋肉も糖の取り込みをする準備を始めますし、血糖が上がる前にしっかりグルカゴンの働きも抑えます。それによって少しのインスリンで血糖をコントロールすることができますから、高インスリンによっておこる代謝の異常や過度の同化(肥るってこと)はいくら糖質をとってもこの場合おこらないのです。

 

他にもいろいろな要素がありますが、ここまでの部分だけでも一律な糖質制限には問題があるのです。

 

常に過度に刺激されたα細胞(グルカゴンの分泌細胞)はやがて暴走を始めます。これはインスリンの分泌が減ってしまってきた糖尿病状態でおこるのではなく、まだまだβ細胞が全く正常に分泌されているごく初期から起こっていた.そしてその暴走にあわせて、インスリンがどんどん必要になって高インスリン状態が続き、それがいろいろな病理を引き起こしていった。つまりインスリンはぜんぜん悪者ではなかったんです。グルカゴンの反乱こそが肥満や糖尿病の原因であったということになります。

「堀の中の患者様」刑務所医師が見た驚きの獄中生活       日向正光著より抜粋 その1

前任の医師からヒントをもらい日向医師は糖尿病受刑者を何人か診察すると、確かに血糖値がよくなっていることに気がついた。

 

でも、これって当たり前だよな、強制労働させられて、食事のカロリーも少なくて、規則正しい生活をしているのだから、、、と初めは考えた。だが毎回検食する受刑者の食事を思い浮かべると、麦飯に汁物、副菜ととてもバランスよく、おいしいのだが同時にとても食べきれないほど分量が多いのだ。

 

彼が所内の職員に聞いたところ、受刑者は作業に応じて1日に2220から2620kcalといわれたが、もっと多い気がして管理栄養士のところまで行って詳しく尋ねると実際はさらに400kcalほど、食事くらい良くしないと暴動が起きかねないのでという理由で増やしていたことを知る。なんととんでもない量を食べていたのだ。

 

受刑者の実際の食事も紹介されていた。ハンバーグやカレーライス、うどんや魚フライなど献立も多彩でメニューも豊富であり、味も意外においしいと書かれている。

 

とにかく受刑者たちは日々こんなものを食べ、日々健康を回復していく。もちろん初めから食事制限されている受刑者もいたが、制限されていなくても血糖値が改善している受刑者もたくさんいた。

 

過去のカルテを引っ張り出して調べてみると、驚異的に改善しているデータが次々と確認された。何もしないで勝手に血糖値が改善した者、内服薬が減らせたり中止で来たりした者、中にはインスリンすら中止できた者までいた。それも一人や二人ではない。全体で100人以上いた糖尿病受刑者のうち、実に8割以上の驚くべき数値で改善していたのだ。

 

これは大変なことではないか、と彼は大学の恩師に相談してみる。しかしそんなのあたりまえじゃないか、論文にはならないよと笑われた。

しかしめげない彼はひとり調査研究にたちむかうことを決めたのだ。続く